令第82条 第四号
- 使用上の支障に関する検証が必要として大臣が定める場合に、構造耐力上主要な部分である構造部材の変形または振動によって、建築物の使用上の支障が起こらないことを、大臣が定める方法によって確かめることが、令第82条第四号で求められています。
使用上の支障が起こらないことの検証が必要な場合(平12建告第1459号第1)
- 構造耐力上主要な部分の剛性が不足しているような場合には、安全に荷重を支持できている状態であっても過大な変形や振動による使用上の支障が問題となることがあります。
- そこで、建築物の構造耐力上主要な部分(床面に用いるはり、床版)について、スパンに応じたはりのせい、床版の厚さの条件が定められています。
- なお、屋根版については、原則として対象とはなりません。(ただし、屋上利用する場合は、対象となります。)
- 次の表に掲げる条件式を満たす場合以外の場合は検証が必要とされています。(すなわち、条件式を満たす場合は、検証不要となります。)
建築物の部分 | 条件式(単位mm) | |
---|---|---|
木造 | はり | D/L > 1/12 |
鉄骨造 | デッキプレート版 | t/Lx > 1/25 |
はり | D/L > 1/15 | |
鉄筋コンクリート造 | 床版(片持ち以外) | t/Lx > 1/30 |
床版(片持ち) | t/Lx > 1/10 | |
はり | D/L > 1/10 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | はり | D/L > 1/12 |
アルミニウム合金造 | はり | D/L > 1/10 |
ALCパネルを用いた構造 | 床版 | t/Lx > 1/25 |
t:床版の厚さ
Lx:床版の短辺方向の長さ(デッキプレート版またはALCパネルは、支点間距離)
D:はりのせい
L:部材の有効長さ
例えば、バルコニー等の利用が計画されている、鉄筋コンクリート造の片持ち床版について、有効長さ L=2000㎜、床版の厚さ t=200㎜の場合、
t/L = 1/10となり、条件式を満たさないため、使用上の支障が起こらないことの検証が必要となります。
例えば、屋上利用の計画のない鉄筋コンクリート造の屋根版について、有効長さ L=6000㎜、床版の厚さ t=200㎜の場合、
屋上利用の計画のない屋根版ため、使用上の支障が起こらないことの検証は不要となります。
使用上の支障が起こらないことの検証方法(平12建告第1459号第2)
- 建築物に乗じ作用している荷重(固定荷重および積載荷重)によって、はりまたは床版に生ずるたわみの最大値が、クリープを考慮してスパンの1/250以下であることを確かめる。
- この場合の積載荷重は、実況によるほか、令第85条の地震力を計算する場合の数値とすることができる。
- クリープによる影響(変形増大係数)は、告示第2第二号に規定の、下記の表の数値によるほか、載荷実験により求めた数値とすることができる。
たわみの最大値(固定荷重+積載荷重【地震用】)× 変形増大係数/部材の有効長さ ≦ 1/250
構造の形式 | 変形増大係数 | |
---|---|---|
木造 | 2 | |
鉄骨造 | 1(デッキプレート版にあっては、1.5) | |
鉄筋コンクリート造 | 床版 | 16 |
はり | 8 | |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 4 | |
アルミニウム合金造 | 1 | |
ALCパネルを用いた構造 | 1.6 |
例えば、鉄筋コンクリート造の片持ち床版について、有効長さ L=2000㎜、床版の厚さ t=200㎜で、たわみの最大値=0.5㎜の場合、
たわみの最大値 0.5㎜ × 変形増大係数 16 / 部材の有効長さ2000㎜= 1/250となり、使用上の支障が起こらないことが確認できます。